あなたは普段どんな仕事に携わっているだろうか。
少しでもサービス業に関連するならば、この本を読んでみることをおすすめする。経営者であっても、労働者であってもだ。
また、「心あたたまるストーリー」を望んでいる人にもおすすめだ。
この本は多少脚色はあるとしても、実話に基づいたストーリーになっている。人と人との繋がりの中にある、「何か大切なもの」に触れることで、琴線に触れるなにかがあるかもしれない。
この本は4つのショートストーリーから構成される。個人的に勝手なキーワードをつけるとすれば、「空気読み」「小さなウソ」「信頼」「希望」だ。
空気読み
あなたは、「空気読み」と聞いて、どのような印象を持つだろうか?マジョリティーや、パワーゲームの強者からの、半強制的な力のような印象だろうか?それとも、人間関係に於いて大切なモノだと考えているだろうか?
「空気」に関して議論し始めると奥が深いのだが、ここでいう「空気読み」は、サービスにおける潜在的ニーズを読み取る能力を指している。
ホントかウソかは知らないが、欧米で医者にかかった時に、きちんと自分の痛い場所や、気分の悪さを言葉にして伝えないと、何の対処もしてくれないと聞いたことがある。ただ、日本では、かかりつけの医者などは、その患者の言葉の裏にある”本当のこと”を読み取ることが求められる。(という印象がある)
そのように、「本当に望んでいること」を読み取って、相手に提供してあげるという価値観は、特にサービスにおいては重要だ。ニーズというのは、常に自覚があるものではなく、周りが読み取りかたちにすることによって初めて意識されるということは、よくあることだ。
「最初から、してほしいことがあるなら言葉で伝えろよ」
と思うのは至極真っ当な意見だと思うのだが、「伝える」というのは、リアルなコミュニケーションにおいては、「言葉」だけではないということだ。
この章で出てくるばーちゃんも言っている。
「人の気持ちなんて、誰にも分からないよ。でもね、分かろうとする気持ちが大事なんじゃないかしら」
小さなウソ
2つ目のショートストーリーは、ネットでたまに見かける
「よかった。病気の子供はいなかったんだ(涙」
のようなストーリーである。
ストーリーの本質は、そのウソの方ではなく、「ウソをつかせた原因は何か」という「気づき」である。このストーリーのキャスト(ディズニーの従業員のこと)は、お客さんを第一に考えているつもりが、いつの間にか「自分が考えるお客さんが喜んでくれること」に囚われてしまい、本当に望んでいることが見えなくなってしまっていた。要するに「空回り」である。
我々も、そういう部分が多々あるのではなかろうか。「周りのため、チームのため」に頑張っているつもりでも、一人よがりの手段と目標を決定してしまい、本当に他人がその結果を望んでいるのかはあまり気に留めず、自己満足で終わってしまっていないか?ということだ。
信頼
3つめのストーリーは、「信頼する」ことがテーマだ。もっと言えば、「相手の悪い部分に目を向けて疑うのではなく、良い部分を信頼する」ということである。
どういう意味かわかるだろうか?
例えば、ゴミの分別を監督する立場にあるときに、可燃ごみのなかに不燃ごみが混じっていたとする。その場合、悪い部分に目を向けて疑うならこのような注意事項を関係者にメールすることだろう。
可燃ごみに不燃ごみが混じっていました。面倒だからといって、可燃ごみのなかに不燃ごみを捨てないでください。きちんと分別している人にも迷惑です。
と。
本人は、しっかり監督しているつもりであり、普段から分別している人の考慮もしているつもりであるが、はっきり言って普段からきちんと分別している人がこのメールを受け取ると、あまりいい気がしない。それどころか、このメールで「なんだ。ちゃんと分別されていないのか。だったら意味無いじゃん」となってしまう可能性すらある。
そうではなく、「よい部分を信頼する」というのは、
普段からゴミの分別にご協力いただき、まことにありがとうございます。本日は、可燃ごみの収集の日ですが、勘違いで不燃ごみを出されていた方がいましたので、こちらで預かっておきました。きちんとアナウンスできておらず申し訳ありません。不燃ごみ収集の日は……」
というようなことだ。
これを読んで、「下手に出ればいいのかよ?」と思う人がいるかもしれないが、そうではない。最初から相手を悪人と決め付けない心構えが重要である、ということだ。
人を信じるというのは、裏切られるリスクなどを考えるとむずかしくもある。しかし、だからこそ美しい。
「江美ちゃん、このチケットに有効期限はあるのかい?」
この台詞は、このストーリーのキャストが幼い頃に渡してくれた、手作りのディズニーランド入場券を、子供の夢を信じて色褪せるまで持ち続けていた、あるおやじのセリフである。
希望
最後のストーリーは、「希望」がテーマだ。
このストーリーでは、死にかけの少年がディズニーランドへやってくる。これもまた
ホームランを打ってくれたら手術をうけるよ!
といった類の、どこかで見たような構成ではある。
しかし、その「希望」を与えるのが、一個人のスーパーヒーローでないところがミソだ。
組織として、「希望」を与える。一人一人の協力と人を思う心により「希望」を与える。そういうことが出来るチャンスを、我々はどれほど持っているだろうか。
まとめ
この本を読めば、理解しているはずの、「お客さまのニーズに応える」ということが、どういうことなのか?そして、それがどのような意味をもち、どのような影響を与えるのか?ということの意味を改めて感じることができるだろう。
また、それだけではなく、「相手のことを考える」という本質が、ショートストーリーに出てくる人々のやり取りを通して、垣間見えるのではなかろうか。
コメント
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