中小企業の経営者や営業の武器になる本 - プロフェッショナルシンキング - suVeneのアレ

中小企業の経営者や営業の武器になる本 – プロフェッショナルシンキング

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都市伝説かと思っていたら、レビュープラス から献本がきた。ついこないだ出たばかりの本で、最近、本屋で見かけた時買おうかなと思ってた本だったので嬉しい。

というわけで、早速本の内容について語ろう。

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どういう人にお薦めか?

一般的な「フレームワーク」や「思考法」的なビジネス本というのは、何やら大上段から構えられていて、格式高く、どうも大企業の企画・営業や、あるいは今をときめくベンチャー企業をターゲットにして書かれているものが多いと感じる事がよくある。

しかし、この本に書かれている「答えのない未来」に対する考え方や思考法、「顧客」に対するアプローチのための視点については、一般的な中小企業の経営者や、顧客に対して何らかの提案活動を行っている営業にも充分役に立つだろう。

何故ならば、BBT大学という、かの大前研一氏が学長を勤める大学の教授陣が執筆し、しかも「教える」というものではなく「問いかけて訓練する」ということを意識して書かれている本なので、極めて具体的かつ実践的だからだ。もちろんその教授陣自身も、ビジネスの世界において華々しい実績を上げている人々なので、机上の空論ではなく、裏打ちあるものとなっている。

プロフェッショナル シンキング (BBT大学シリーズ)

宇田 左近,平野 敦士 カール,菅野 誠二 東洋経済新報社 2015-07-24
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本の概要

この本は、第1章から第9章からなる。

ざっくり構成を要約すると、

第1〜2章 何故「思考力」を身につける必要があるのか?と、その具体例を盛り込んだショートストーリー

第3〜5章 未来を見通す思考力、思考法

第6〜8章 顧客の未来と、未来の顧客に対するアプローチ法

第9章 集団 IQ について

という感じだ。

「考える必要性」が何故あるのか?というおさらい

はっきり言って、この本を買おう、読もうと思った人にとっては、第1, 2章は少々冗長かもしれない。

しかし、以下の部分に対しては、ほんとにそう思うことが多い。

相手の要求はかならずしもピンポイントではないかもしれないのです。寧ろ多くの場合ズレていると見たほうがよいでしょう。

…略

「依頼主の依頼は、必ずしも当該本人の課題にとって、本質的解決に合致していない可能性がある」

プロフェッショナル シンキング (BBT大学シリーズ) – P22

自分が一番初めに上記の引用のような内容を、言葉として見かけたのは、山本七平の「空気」の研究だったか、「常識」の研究だったかは忘れたが、改めて文章にて目にした時ははっとしたものだ。

当たり前のことだが、「相手が言った」というのは、「相手が言った」という事実以上のことは確認出来ず、言った内容が正しいとか、間違っているとかは、まったく別の話である。

システムの設計者でもよくいるのだが、設計をレビューしてみると、とんでもない対応方針だったりすることがあり、「何故そういう設計をしたのか」と理由を聞いてみると、「お客さまが言ったから、(それが正しいと思い)そのように対応(設計)しました」という、とても情けない話は、残念ながらしょっちゅうある。

他にも、権威者が言っていたり、好感度の高い人が言っていることは、どうしても正しい内容だと思いがちだというのは、人間の特性であるので、その性質を意識しながら、適宜思考するときには思考するようになりたいものだと思う。

未来に対する思考力を身につける

さて、いよいよ具体的な未来に対する取り組み方だ。

未来に対しては、「ある程度予測できる未来」と「まったく予測できない未来」とで対応方針が異なる。

いずれにしても必要となってくるのは、「大局観」であり「波」を読むことである。また、国などの機関や、シンクタンクが公表している、人口構成やGDPなどのメガトレンドを読み解き、そこからアクションできることは何かを考える事が重要だと書かれている。

それは、世界的に有名な経営者であるピーター・ドラッカーのいう「既に起こった未来」でもあり、「社会的、経済的、文化的出来事と、そのもたらす変化にはタイムラグがある」ということを理解していれば、そこに大きなビジネスチャンスが潜んでいるということでもある。

そして、「ある程度予測できる未来」に対しては、「アナロジー思考」が有効であり、「まったく予測できない未来」に対しては、「デザイン思考」「プラットフォーム思考」が有効であると説明されている。

紙面では、プラットフォーム戦略に重点を置かれて説明があったが、戦略名を見れば何となく想像できそうだと思うので、「アナロジー思考」に関するエッセンスのみ引用しておこう。

アナロジー思考とは「他業種や他社のビジネスモデル、さらにはビジネス以外の分野のエッセンスを複数取り入れ、独自の付加価値をつける」点で、単なるパクリとは異なり、まさにその点が成功の鍵となるのです。

プロフェッショナル シンキング (BBT大学シリーズ) – P98

顧客に対するアプローチ

第6章からの後半は、「顧客の未来」に対して、どのような切り口で訴求ポイントを探り、「未来の顧客」をどのように創造していくかというアプローチ方法のレクチャーだ。

概念的には、「構造 × 時間 × 個人」という立体的な思考法で、顧客を知り、顧客の「欲しいもの」の変化を予測し、まだ見ぬ未来の顧客を創造するというものだ。

最初の「構造」や「時間」というマクロに対して使われる分析法はお馴染みの、「3C」 や 「PEST」だ。そして、それらを組み合わせた「6C」というフレームワークや、それらを時系列的にずらして行く「時代分析」というものを用いる。
(3C に加え、Controller(事業の統制者), Channel(流通チャネル), Collaborator(協業者)

文章で書くと、何がなんだか分からないが、実際にサムスン電子を例に 6C分析 や 時代分析をし、そこから考えられる戦略の例等が挙げられているので、自社に当てはめるときの手がかりになるのではなかろうか。

最後に「個人」という、ミクロな視点で顧客に迫る。そのために、ニーズとウォンツを切り分け、更にはそれを段階的に分類し、深く顧客個人の潜在的な内面に潜っていくいくつかの思考法を紹介している。
(ラダリング、DMU、ソーシャルリスニング、MROC、ユーザーIN&Out)

まとめ

駆け足で大筋を紹介してしまったが、いかがだろうか?
(実は最後の「集団IQ」は紹介してないが)

「教えない大学」という異名を持つ、BBT大学の著書なので、明確な答えというものはない。というより、そもそもビジネスには明確な答えはなく、あるのは冒険するのに必要な、たいまつや武器や地図があるだけだということを教えてくれる一冊だ。

関連書籍

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